標準TTLだけ(!)でCPUをつくろう!(組立てキットです!)
(ホントは74HC、CMOSなんだけど…)
[第126回]

●RC発振回路の動作の説明です

7segLED表示回路で、74HC191のCK入力には、抵抗、コンデンサとCMOSインバータを使った、RC発振回路からの出力を使います。
今回は、このRC発振回路の動作について説明をいたします。
改良後の7segLED表示回路は[第124回]にありますが、今回はRC発振回路の部分のみ切り取って再掲します。

CMOSインバータ2個と抵抗2本、コンデンサ1本だけという、きわめてシンプルな発振回路です。
今回のLED表示回路のように、アバウトな周波数でかまわないときなど、なかなか重宝する回路です。
しかし、簡単そうに見えるシンプルな回路の割には、その動作はそれほど簡単なものではありません。

順を追って説明していくことにしましょう。
以下の説明を少しでも分かり易くするために、上の回路から抵抗値を一旦外して、一般的なR1、R2、C1の記号を使うことにします。
また、電圧の変化のポイントになるところに(A)、(B)、(C)の記号をつけることにします。

こんな感じです。

さて、まず最初に[図1]のように74HC04の1pinがLだったとします。
R1は回路の保護のために入れてあるものです。R1には電気は流れません(はずなのですが、実はしっかり流れてしまいます。そのことについてはのちほど説明します。ここでは公式通り流れないことにしておいてください)。
回路の主役はR2とC1です。
1pinがL(0V)ということは、(B)も0Vということです。
ここからお話が始まります。

(B)つまり1pinが0Vですから、インバータの出力である(C)は当然+5Vになります。
するとその後ろのもうひとつのインバータの出力である(A)は0Vになります。
ここまでは、デジタル回路がわかる方なら誰でも、当たり前に納得できるところです。
すると、R2とC1には、(C)の+5Vから図の矢印の向きに、C1を充電するように電気が流れます。

うーん。そこのところが、ちょっとだけ、わかりにくい。ですか?

わかりやすいように、[図1]を少し描きかえてみましょう。


(A)は0Vで、インバータの出力ですから、このときはGNDとショートしているのと同じことになります。
それなら、[図2]のように、C1を(A)から離して、GNDに直接つないでしまっても、同じことになるはずです。
すると、[図2]では(C)の+5Vから、R2を通って、C1に矢印の向きに充電電流が流れることがわかりますね。

C1は充電されていきますから、時間の変化につれて、(B)点の電位が上がっていくことも納得できると思います。
(B)点の電圧の変化をグラフにしたのが、[図2]の右側の図です(充電曲線ですから、本当は曲線ですが、模式的に直線で示しました)。

ここまでは、まずまず当たり前の話なのですが、そのようにして、やがて(B)点の電圧が+2.5Vになると、突然、信じられない、とんでもない変化が発生します。

●インバータの入力が+2.5Vを越えると、とんでもないことがおきてしまいます!

まずは、とんでもないことがおきてしまう、その直前の状態を回路図で示します。

(B)点の電圧が+2.5Vを越えると、R1には電気は流れませんから、その電圧はそのまま、インバータのpin1の入力電圧になります。するとインバータの出力が反転して、+5Vだったものが0Vになります。図では→0Vという意味で、->0Vと表記してあります。つまり(C)点の電圧が、0Vになります。
すると、(A)点の電圧は逆に0Vが反転して+5Vになります。図では->+5Vと表記してあります。
この瞬間にとんでもないことがおきてしまいます。


[図4]を見てください。(B)点の電圧が、突然、なんと+7.5Vに急上昇してしまいます。
そんな、ばかな!
+5Vしか供給していない回路なのに、どうして?
その説明をする前に、実物をお見せしましょう。


コンデンサの両端の波形です。
上側は(A)点、下側が(B)点です。
写真の左端、(B)点の電圧がだんだんと上昇していって、+2.5Vになった途端、いきなり+7.5Vまで上昇しています。
そのタイミングは上の(A)点の電圧が0V→+5Vになるのと同時のように見えます。
なぜこんな不思議なことがおきるのでしょうか?

●コンデンサが2階に?

もう一度、[図2]を見てみましょう。
このことがおきる直前まで、コンデンサC1はR2を通して充電されていました。
その結果、(B)点の電圧が上昇して+2.5Vになったのでした。
このとき、コンデンサC1は+2.5Vまで充電されていたことになります。
そして、その次の瞬間、いままで0Vの上に乗っていたC1は、(A)点が+5Vになったため、いきなり+5Vの上に乗っかってしまったのです。いままで1階にいたのに、いきなり2階に上がってしまったようなものです。

わかりやすいように、[図4]を描きなおしてみます。


(A)点は+5Vで、その上に、+2.5Vに充電されたコンデンサが乗っているわけですから、ここは[図5]のように、+5Vのバッテリの上にもうひとつ+2.5Vの電池(ほんとうはコンデンサですけれど)が直列になって乗っている、と考えることができます。
そして(C)点は0V(GND)ですから、+2.5Vに充電された電池(コンデンサ)がR2を通して、矢印の向きに放電することが理解できると思います。
この矢印の向きに流れる電流は[図4]の矢印の方向になります。
最初のC1への充電が行われたときと、電流の向きが逆になっています。
今回は放電ですから、(B)点の電圧は+7.5Vから、放電が進むにしたがって低下していきます。

●放電し終わって、C1の電圧が0Vになったら、そこで止まる?

ところが、コンデンサC1が完全に放電してしまっても、電流は流れつづけます。(B)点の電圧は、+7.5Vだったものが、+5Vになっても、下げ止まらないで、+4V、+3Vと低下していってしまいます([図6])。
いったい、どうしたことでしょう。


今回もわかりやすいように、[図4]または[図5]で、C1が放電を終わったあとの回路の状態を描きなおして示してみましょう。


C1が放電してしまっても、(A)点は+5Vのままですから、これはC1が直接Vccに接続されているのと同じことになります。
すると[図7]の左の図の形になりますから、Vccから、C1を充電するように、矢印の向きに電流が流れます。

いや、そんな充電回路は見たことがないぞ。と言われる方は、[図7]の左の図の抵抗とコンデンサの位置を逆にして、右の図のようにしてみてください。ほら、ね。充電回路に間違いありませんね。
(もちろん、右の図は、理解を助けるために、わざと抵抗とコンデンサを逆にしてみただけで、左の回路が右の回路と同じ、という意味ではありません)

[図7]の左の図で、コンデンサが充電されていくと、コンデンサの両端には電圧が発生してきます。
Vccは+5Vのままですから、(B)点の電圧は+5Vから、だんだんと低下していくことになります。
それが、[図6]のグラフで示した、(B)点の電圧の推移です(右下がりの斜線)。

(B)点の電圧がだんだんと低くなっていって、ついに+2.5Vまで下がると、またもや信じられないことがおきてしまいます。

●インバータの入力が+2.5V以下になると、ふたたび、とんでもないことが…

まずは、ふたたびとんでもないことがおきてしまう、その直前の状態を回路図で示します。

(B)点の電圧が+2.5V以下になると、R1には電気は流れませんから、その電圧はそのまま、インバータのpin1の入力電圧になります。するとインバータの出力が反転して、0Vだったものが+5Vになります。図では→+5Vという意味で、->+5Vと表記してあります。つまり(C)点の電圧が、+5Vになります。
すると、(A)点の電圧は逆に+5Vだったものが反転して0Vになります。図では->0Vと表記してあります。
この瞬間にふたたびとんでもないことがおきてしまいます。


[図9]を見てください。(B)点の電圧が、突然、今度はなんと−2.5Vに急低下してしまいます。
ふたたび、そんな、ばかな!…です。
さきほどいきなり+7.5Vになったと思ったら、今度は一転して、なんとマイナス電圧になってしまった?

さきほどの写真をもう一度、よく見てください。
0Vより下は画面から隠れていて見えませんが、その波形から、確かに、0V以下に下がっている部分があることは、間違いありません。

●今度は、コンデンサが地下に?

もう一度、[図7](の左の図)を見てみましょう。
このことがおきる直前まで、コンデンサC1はR2を通して充電されていました。
しかし[図2]のときと充電電流の向きが逆になっています([図2][図7]では天地が逆になっています)。
今回はコンデンサに充電されるにつれて、(B)点の電圧が低下して+2.5Vになったのでした。

このとき、コンデンサC1は+2.5Vまで充電されていたことになりますが、C1の両端の電圧を見ると、充電完了直前まで(A)は+5Vのままで、そして(B)は+2.5Vに向かって低下していたわけですから、(B)はコンデンサのマイナス側になっていることがわかります。

そして、その次の瞬間、いままでその+側が+5VにつながっていたC1は、(A)点が0Vになったため、いきなり0Vに+側がつながった形になり、その結果、C1のマイナス側にある(B)点は、C1に充電された電圧(+2.5V)だけ、0Vよりマイナス側に位置することになってしまったのです。いままで1階にいたのに、今度はさきほどとは逆に、いきなり地下にもぐってしまったようなものです。

うーん。これは、わかりにくいですね。
[図9]をまた描きかえてみましょう。


こんな感じです。
(C)点は+5V、(A)点が0V(GND)で、そこに+2.5Vに充電されたコンデンサがつながっているのですから、(C)と(A)の間に+5Vの電池が入っていると考えると、納得できると思います。
すると矢印の向きに電気が流れることもわかりますね。

ですから、[図9]では矢印の向きに電気が流れている、ことになります。
この向きに電気が流れることによって、コンデンサが放電されていきます。
そして、コンデンサが放電するにつれて、(B)点の電圧は−2.5Vから、だんだん上昇し0Vに近づいていきます([図11])。



そしてC1が完全に放電して、(B)が0Vになると、今回の説明の最初の状態になります。

以上、説明してきましたように、コンデンサが充電されることで、インバータの出力が反転し、するとそれによってコンデンサが放電し、今度は逆の向きにコンデンサが充電され、それによって、またインバータの出力が反転し、そして、それによって、またコンデンサが放電し…、ということを繰り返すことで、方形波の発振が行われることになるのです。

今回はここまでで、ひとまず説明を終わります。
次回は、もう少し、この続きをしたいと思います。
2008.12.15upload
2008.12.16一部加筆・書換

前へ
次へ
ホームページトップへ戻る